お腹周りの脂肪が気になり出し血圧も高め、いわゆるメタボリックシンドロームと診断された人が同時に薄毛にも悩まされている確率は統計的にも非常に高いことが知られていますが、この二つを結びつける黒幕としてインスリン抵抗性という病態が存在します。メタボ体型の人、特に内臓脂肪が多い人は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなっており、体はそれを補うために過剰なインスリンを分泌するようになります。この高インスリン状態が実は薄毛のメカニズムに深く関与しているのです。インスリン抵抗性があると血管がダメージを受けやすくなり高血圧を引き起こしますが、同時にインスリン濃度の高さは交感神経を刺激してさらに血圧を上げるという悪循環を生みます。これにより頭皮の血流が悪化するのは前述の通りですが、さらに恐ろしいのはホルモンバランスへの影響です。高インスリン血症は性ホルモン結合グロブリンというタンパク質を減少させ、結果として活性型の男性ホルモン(テストステロンやジヒドロテストステロン)の影響力を強めてしまう可能性があります。AGA(男性型脱毛症)はジヒドロテストステロンが毛根を攻撃することで発症しますが、メタボによる代謝異常がこの攻撃を助長してしまうのです。つまり、太っていて血圧が高いという状態は、物理的な血流阻害とホルモンによる毛根攻撃というダブルパンチを頭皮に見舞っていることになります。また脂肪細胞からは炎症性サイトカインという物質が分泌され、これが全身に慢性的な微弱炎症を引き起こしますが、毛根もこの炎症の被害を受けやすく、脱毛シグナルが活性化される一因となります。したがって、メタボ対策としてのダイエット、つまりカロリー制限や糖質制限、運動などは、単に痩せるためだけでなく、インスリン抵抗性を改善し高血圧を是正し、ひいては薄毛の進行を食い止めるための直接的な治療行為となります。お腹の脂肪が減れば血圧が下がり、血圧が下がれば頭皮の血流が戻り、ホルモンバランスも整う。すべては繋がっているのです。育毛剤を使っても効果が出ないと感じているメタボ体型の方は、まずそのお腹の脂肪を落とすことから始めてみてください。体型が変わる頃には、抜け毛の量にも明らかな変化が現れているはずです。