産後の抜け毛の大きな引き金となる、ホルモンバランスの乱れ。そして、その乱れに、さらに追い打ちをかけるのが、育児に伴う「ストレス」と「睡眠不足」です。この二つの要因は、自律神経のバランスを崩し、頭皮の血行を悪化させることで、抜け毛をさらに深刻化させてしまう、恐るべき悪循環を生み出します。赤ちゃんのお世話は、24時間体制です。夜中の授乳やおむつ替えで、まとまった睡眠時間を確保することは、ほぼ不可能です。慢性的な睡眠不足は、髪の毛が最も成長する、夜間に分泌される「成長ホルモン」の分泌を、著しく妨げます。これにより、新しい髪が生えにくくなったり、生えてきても、細く、弱々しい髪になってしまったりするのです。また、「泣き止まない赤ちゃんを、どうあやせばいいのか」「母乳は、足りているのだろうか」といった、育児に対する不安や、思い通りにいかないことへの焦り、そして、社会から孤立しているような孤独感。これらはすべて、ママの心に、大きなストレスとしてのしかかります。強いストレスを感じると、私たちの体では、交感神経が優位になり、血管が収縮します。その結果、体の末端である頭皮の毛細血管への血流が悪化し、毛根に、髪の成長に必要な十分な酸素と栄養が、届かなくなってしまうのです。この、ストレスと睡眠不足という、二重の攻撃から、髪と体を守るためには、ママ自身が、意識的に「休息」をとり、「リラックス」する時間を作ることが、何よりも重要です。完璧な育児を目指そうと、一人で抱え込んではいけません。パートナーや、家族、あるいは、地域のサポートサービスなどを、積極的に頼り、赤ちゃんのお世話を、少しの時間でも代わってもらいましょう。そして、その間に、たとえ15分でも、昼寝をする、好きな音楽を聴く、ゆっくりとお茶を飲む、といった、自分だけの時間を持つこと。それが、ホルモンバランスを整え、血行を改善し、抜け毛の進行に、ブレーキをかけるための、最も効果的な「処方箋」となるのです。