AGA治療は近年大きく進歩しており、遺伝的要因を持つ人でも効果的な治療を受けることが可能になっています。内服薬としては、5αリダクターゼの働きを阻害するフィナステリドやデュタステリドが広く用いられています。これらの薬剤はDHTの生成を抑制することで、脱毛の進行を遅らせ、発毛を促進する効果が期待できます。また、外用薬としてはミノキシジルが知られており、毛乳頭細胞に直接作用して毛髪の成長を促します。さらに、近年ではPRP療法や幹細胞を用いた再生医療など、より高度な治療法も研究・実用化されつつあります。これらの治療法は、個々の遺伝的特性や症状の進行度合いに合わせて選択され、パーソナライズされた治療計画が立てられます。AGAの遺伝について、多くの誤解が存在します。例えば、「薄毛は母親からしか遺伝しない」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは正確ではありません。確かにX染色体上の遺伝子が関わるため、母親からの遺伝も重要な要素ですが、父親からの遺伝も無関係ではありません。実際には、複数の遺伝子がAGAの発症に関与しており、その組み合わせによって発症リスクや進行パターンが異なると考えられています。また、「一度薄毛になったらもう治らない」という悲観的な見方もありますが、これも現代の医療においては当てはまりません。早期に適切な治療を開始すれば、その進行を食い止めたり、ある程度の改善を見込めるケースは少なくありません。