フィナステリドの服用を始めて、1年。抜け毛は減り、髪の状態も、満足のいくレベルまで回復した。では、この先も、ずっと、この薬を飲み続けなければならないのだろうか。その答えは、残念ながら、しかし明確に「イエス」です。AGA(男性型脱毛症)は、高血圧や糖尿病といった、生活習慣病と同じ、「慢性の、進行性の疾患」です。フィナステリドは、その症状を「完治」させているわけではなく、あくまでも、薬の力で、その進行を「抑制」しているに過ぎません。AGAの根本原因である、遺伝的な体質や、男性ホルモンの働きそのものが、薬によって変わったわけではないのです。もし、ここでフィナステリドの服用をやめてしまえば、どうなるでしょうか。これまで、薬によって、必死で押さえ込まれていた、脱毛ホルモン「DHT」の生成が、再び、活発に始まります。ダムの堰を切ったかのように、DHTが、毛根への攻撃を再開するのです。その結果、フィナ-ステリドの服用によって、正常な状態を取り戻していたヘアサイクルは、再び乱れ始め、髪の成長期は短縮され、せっかく太く、長く成長していた髪の毛も、次々と、細く、短いまま抜け落ちていくのです。治療によって得られた、1年間の成果は、残念ながら、服用を中断すれば、数ヶ月から1年程度の時間をかけて、ゆっくりと、しかし確実に、失われていってしまうのです。それは、まるで、苦労して山頂まで登ったのに、自ら谷底へと、転がり落ちていくようなものです。したがって、AGA治療によって得られた、良好な髪の状態を、この先も「維持」したいと願うのであれば、フィナステリドの服用を、生涯にわたって、継続していくことが、原則として、必要となります。もちろん、医師と相談の上で、薬の量を調整したり、より安価なジェネリック医薬品に切り替えて、経済的な負担を軽減したり、といった工夫は可能です。しかし、「やめたら元に戻る」。この、厳しい、しかし変えようのない事実を、私たちは覚悟し、AGAという、長い付き合いになるであろう“持病”と、賢く、そして根気強く、向き合っていく必要があるのです。
フィナステリド、1年後も飲み続けるべきか