ジヒドロテストステロン（DHT）が毛乳頭細胞のアンドロゲンレセプターと結合すると、毛髪の成長サイクルに深刻な影響を与えます。通常、髪の毛は成長期、退行期、休止期というサイクルを繰り返していますが、DHTがレセプターに結合することで、成長期が著しく短縮されてしまいます。これにより、髪の毛が十分に成長する前に退行期に入り、細く短いまま抜け落ちてしまう現象が起こります。結果として、健康な太くて長い髪が育ちにくくなり、全体的に髪のボリュームが減少し、薄毛が進行するのです。このメカニズムは、あたかも植物の成長サイクルが乱され、芽吹いてもすぐに枯れてしまうようなものと言えます。このDHTとアンドロゲンレセプターの結合が、AGAの進行を決定づける最も重要なステップなのです。AGAにおける毛周期の乱れは、脱毛の進行に直結する重要なメカニズムです。健康な髪の毛は、数年間続く成長期を経て、その後数週間程度の退行期、そして数ヶ月間の休止期に入り、自然に抜け落ち、新しい髪の毛が生えてきます。しかし、AGAを発症すると、前述のDHTの影響により、この成長期が大幅に短縮されます。これにより、毛髪は十分に太く長く成長する前に、未熟な状態で退行期へと移行し、細く短いうちに抜け落ちてしまいます。このサイクルが繰り返されることで、毛包は次第にミニチュア化し、最終的には機能しなくなり、髪の毛が生えなくなってしまいます。この状態を「軟毛化」と呼び、AGAの典型的な特徴の一つです。毛周期の正常なサイクルが維持されない限り、薄毛は確実に進行していくことになります。