薄毛を気にし始めると多くの人がまず取り組むのがシャンプーやトニックなどのヘアケアですが、皮肉なことに「髪のため」と思って行っている毎日のケアそのものが、実は頭皮を痛めつけ薄毛を加速させる最大の原因になっているという悲劇が後を絶ちません。その代表例が「洗いすぎ」による頭皮バリアの破壊です。頭皮の脂は薄毛の大敵だと思い込み、洗浄力の強い高級アルコール系シャンプーを使って朝晩二回もゴシゴシと洗髪をしている人がいますが、これは頭皮にとって自殺行為に等しいと言えます。頭皮から分泌される皮脂には、紫外線や乾燥、雑菌から頭皮を守る天然のクリームとしての重要な役割があります。これを根こそぎ洗い流してしまうと、頭皮は無防備な状態になり乾燥して炎症を起こすだけでなく、失われた皮脂を補おうとして過剰に皮脂を分泌するようになります。その結果、洗えば洗うほど脂っぽくなるという悪循環(インナードライ)に陥り、毛穴が詰まりやすくなったり、常在菌のバランスが崩れて脂漏性皮膚炎を引き起こしたりして、抜け毛が増えてしまうのです。また、爪を立てて頭皮を強くこするような洗い方も、新生毛を引き抜いてしまったり角質層を傷つけたりする原因となります。さらに、洗髪後のケアにも落とし穴があります。自然乾燥は髪に優しいと勘違いしている人がいますが、濡れたままの頭皮は雑菌が繁殖しやすい高温多湿の環境であり、生乾きの臭いの原因になるだけでなく、頭皮が冷えて血行不良を招くリスクもあります。逆に、ドライヤーを近づけすぎて高温の熱風を当て続けることも、頭皮を火傷させタンパク質を変性させるため厳禁です。そして意外と見落とされがちなのが、育毛剤や整髪料の誤った使用です。効果を焦って規定量以上の育毛剤をジャブジャブと振りかけたり、頭皮に合わない成分が含まれているものを使い続けたりすることは、接触性皮膚炎やかぶれを引き起こし、健康な髪が生える土壌を台無しにしてしまいます。整髪料を頭皮に付着させたまま寝てしまうのも、毛穴を塞ぎ呼吸を妨げる行為です。本当に髪のことを思うなら、まずは「やりすぎない」勇気を持つことが大切です。アミノ酸系の優しいシャンプーを使い、指の腹で優しくマッサージするように洗い、適度な距離からドライヤーを当てて素早く乾かす。そして何よりも、自分の頭皮の状態をよく観察し、赤みやかゆみが出ていないかを確認しながらケアを行うこと。良かれと思ってやっていることが逆効果になっていないか、一度立ち止まってヘアケア習慣を見直すことが、薄毛の原因を断ち切るための近道なのです。